残んの月が地球に落っこちる前に

僕らは窓に灯した蛍光灯を消し

旅に出よう

ドアを静かに閉め

その静寂を壊さぬよう

残んの月が地球に落っこちる前に

僕らはあの路地裏を通り

有余依涅槃へ続くと言う

あの汽車に乗り

旅に出よう

僕の好きな原色の黒い夜が煙りけぶる前に

僕はピカピカと光る街灯かりや

香水の匂いを漂わせる

女の人たちの赤やピンクのスパンコールの色を

昼はっきりと思い出せるよう

僕はこの眼を燃やし、焼き付けておこう

眼を閉じたら

この景色が直ぐに目の前に広がるよう

眼を閉じたら

いつでもこの世界に逃げ込めるよう

ドアを静かに閉め

その静寂を壊さぬよう

僕らは窓に灯した蛍光灯を消し

旅に出よう

残んの月が地球に落っこちる前に