そこは何も見えぬ/そこには何も見えぬ/ 両手をひろげ深海でも彷徨うように/ 指先を 両腕を ヒラヒラと はためかせ/ 何かを探し 求め 探り 手繰り寄せるように/求め/ それでも 何も 掴めず 見つからぬ/ 此処は何処だ/それが分からない/ そこは 何も 見えぬのだから/

その音は骨の鳴る/その音は脳髄から身体に響きわたる/ その音は その音は/手の指先から 骨髄から ぎこちなく 身体に響きわたる/ その音よ 流れ渡る 血流の 血管の/ ぎこちなく踊り続けるピエロとオルゴールよ/ その音よ 鳴り止まぬ 全身の響き渡る叫び声よ/ その音よ その/音よ/

閉鎖した/この虚ろな暗黒が暗闇が/ 木漏れ日も、夜空に響きわたるあの星星のわずかな ひかりも 月光も/ 鉄の 鉛の 決して開かれることのないカーテンが/ 吹雪も、風も、そよ風もなく 沈黙したまま閉鎖されている/ 酸素も欠乏して 息が詰まる/ 首をきつく 硬く 絞められて/ 肺に酸素が欠乏して 息が詰まる/ もう 此処からは 抜け出せない/ しかし この息苦しさの なんと 心地良いことか/

やめてくれ!/ 脳髄に 骨髄に 心髄に/ ギシギシと共鳴する不協和音よ!/ やめてくれ!/ 身体(しんたい)に、爪先から 心臓を目指して/ キイキイと奏で出る 歪な 不協和音よ!/ やめてくれ!と/ 血まみれで脳髄を/その痛みとな要素を/ やめてくれ!と/ 叫ぶ、叫ぶ、叫んでる/

スモーク スモーク スモークが立ち込めるスモーク スモーク スモーク/煙立つ/ 白く 透明の 幽霊よ/君たちは遊びながら/ 口に種火に 舞い上がる/ 静かに赤く光り そして 白く 灰色になって 死んで行く/ 残骸たちよ/押しつぶされ 消えて 殺される フィルターよ/ 君たちの遊びながら/自由に舞い上がり/そして儚くも死んでいく君たちの/ 暗く赤い灯火と 焼けては焦げて/灰皿という墓場に眠る君たちの/ スモーク スモーク スモークが立ち込める/ スモーク スモーク スモーク/煙立つ/

地平線に/(黄色の、肌色の、赤茶色の、褐色の)/空に(青の、藍の、群青の、灰色の、水色の)/星に(銀色の、赤の、橙の、ピカピカと輝く銀青の)/何処までも続き 何処までも交じり合う、両手で握り締め、両手から零れ落ちる、砂、砂、土、土、砂、砂、大地の欠片。  僕は抱きしめて、僕と抱き合って、そして零れ落ちる(儚い、夢の、刹那の)僕の眼球は、身体は、意識は、風と砂煙に消え去り、モクモクと消え去り、何処までも続き 何処までも交じり合う

地平線何処まで行ったら巡り逢うのか/深海と晴天はその お互いの蒼さを知りながら互いに見つめあい しかし永遠に手の繋ぎあうことの出来ないロミオとジュリエット/その愛おしさゆえに/あの二人はその蒼さを、群青を轟かせているのだ/ 手の繋ぎあうことの寂しさを伝え、響かせあっているのだ/あの二人は強い抱擁の代わりに/蒼を、その群青を/雲の 空気の 地上の 地平線の 遮る カーテンを開けながら